一見野心作

  • 『ロスト・メモリーズ』01 イ・シミョン

1909年の安重根による伊藤博文暗殺が失敗し、以後第2次大戦戦勝国となった日本に統治され続ける韓国。パラレル・ワールドものだと思ったら、後半で伊藤博文の暗殺に成功した「正しい」歴史の存在が明らかとなり、物語のメイン・プロットはタイムスリップしての暗殺実現に移る。
冒頭の設定だけ聞くと村上龍の『5分後の世界』を思い出す。村上龍の小説は時間軸が同じ(厳密にいえば僅か5分の差)であるのに全く異なる世界観を持つ日本人を示すことによって実在の日本人を照射するものだったが、「正しい」歴史があればそういった異化の面白さは生じない。
さほどの本数を見た訳ではないが、韓国人刑事が感情に駆られて捜査で暴走する描写やら、ヒロインがサーチライトの逆光に照らされつつ機動隊に蜂の巣にされるスローモーションやら、韓国映画のダサさと日本映画のダサさはおそらく共通する。香港映画にも同種のダサさがあるのだが、香港映画は映画的な情感と現実の情感を区別していて、映画には向かない情感を描写しようとしない。だからバカにはなってもクサくはならない。