『明治天皇と日露大戦争』57 渡辺邦男

映画史上空前のヒットとなり、観客動員数は『千と千尋』まで破られなかったという。
破れた戦争においては描き得ない、美しき忠君と愛国の物語。戦後10年ちょっとの日本人にとっては慰めになっただろう。
律儀といえる程交互に戦地と皇居とを見せていく。


日露戦争は、白人からは同等とみなされていない民族・国家が、世界最強と謳われた白人国の軍隊を破った戦争である。近代戦において有色人種が侵略者の白人を撃退した最初の戦争であり、日本が誇るべき世界史の画期である。
戦争スペクタクルのネタとして優れたものなのは確かだが、アクション映画としては作られていない。不思議と司馬遼太郎の『坂の上の雲』も映画にはなっていない。『忠臣蔵』すら映画にするハリウッドである、ロシア軍をアメリカ人俳優で独占しセオドア・ルーズベルトも絡めて映画にするかもしれない。
映画ではないにしろ、漫画家・江川達也の『日露戦争物語』が視覚メディアとして先鞭をつけるか期待したけれど、進行が止まっているのが惜しい。


タイトルは明治天皇御製。
ラカン演じる明治天皇はひたすら戦を嘆き、国民を(時にはロシア軍人までも)いたわる。