『タイタニックの最期』53 ジーン・ネグレスコ

「騎士道」というべきか、「女と子供の生命を優先する」という価値観に粛々と殉ずる男達。偶然だが、昨日見た特攻隊員達の逸話と重なっていて、どちらも死にいく男と残される女と子供。
同時収録のタイタニックを扱った作品についてのドキュメンタリーを見ると、どの作品もそういった現実に起こった生死のエピソードとともに、悲劇を際立てる冷徹な運命の描写に拘っている。タイタニックが長らく語り継がれる理由は要約すればこの2点ではないか。
タイタニックの最期』の冒頭の場面は氷河からの氷山の分離で、人間を無視して動く冷徹な「世界」の存在を示す。(ついつい最近の地震津波のことも考える。)主人公の貴族は、出航時に2等に乗ろうとしている貧しい家族の父親と交渉して高値でチケットを譲り受け乗り込む。運命の感覚が少ないキャメロン版*1では目立つ、主人公が出航直前にポーカーで買ってチケットを手に入れるという運命の皮肉を感じさせるエピソードの元ネタはここかと気付く。

*1:だから、キャメロン版の印象は悲劇というよりメロドラマに近くなる。けなしている訳ではなく、非常にウェルメイドなメロドラマ。