『イングリッシュ・ペイシャント』96 アンソニー・ミンゲラ

現在と交互に語られる「患者」の回想が、今看病されている環境やその周囲の人々とどういう関係にあるのかが最後までわからない。最後まで見た結論としては、演出として単に並列して提示していたということらしいが、現在との関わりが不明確だと戸惑う。
最初に「患者」が記憶喪失だという話もあり、それがどの辺りで記憶を取り戻したのかもはっきりせず(「患者」に復讐に訪れた男の話を彼は洩れ聞いているのだが、そのリアクションがない)、周囲の人々が彼の記憶の度合いをどう見ているのかも描かれないままなのだ。
現在と過去の混濁した感覚を狙って、あえてそのあたりを曖昧にしたようにも思えるが、とりあえず失敗している。
ついでに激動しているであろう戦後の軍撤退中の周囲の環境もよくわからないし、アフリカなのか地中海を渡ってヨーロッパにいるのかも後半になるまで分からなかった。欧米人には地形や建物や植生の印象でわかるのかもしれないが…