マルチ

当然ながら本人は「マルチ」とは一言も言わない。僕も持ち出さなかった。


これは商売では「ない」。ただ、セミナーに来ないかと誘っているだけ。(つまり何の強制力もなく、責任もない。)
セミナーにて浄水器とシステムの詳細な説明がなされる。
とりあえず1台(50万円)を購入せねば販売を紹介することが「出来ない」。
3人優秀な人間をやる気にさせればその3人が動いて「孫」の代が拡がりその後収入は続くだろう。
最初の二人では2万5千円のマージン。3人目からは5万円になる。
最終的な「紹介者」の利益率は75%という、広告費と流通費に無駄金を費やし、「ユダヤ的資本主義」では考えられない良心的な高率になるが、その計算式は自分には説明する能力が無い。セミナーではきちんと説明してくれる。(「なぜ最初からバック率が75%でないのですか」と問うと、「やはり会社を発展させなければ」)
通算100台が売れると、「A4」ランクの「会員」に昇進して配当が受けられる。(「それは株主になるということですか?」という問いにはいかにも答えがなさそうだったのでしなかった。)
製造者の収入は販売額の25%でしかない。(「それって製造業だと普通じゃないですか?」と突っ込む。)


アメリカの大学病院で働く日本人医師の、摂取する水に関する話題中心の健康管理に関する本もらった。政治家や野球の監督等々、錚々たる名士がクライアントとして推薦文を書いている。


途中、ふと反論が思い浮かばなくなって恐くなった。
予備知識がなく、心理的予防線を引いておかなければ、興味持っていたかも。(いや、実は今も何がこの商法の問題なのだか明確には言えないのだが。)


書きながら推測したのだが、「大親」はきちんとした商品を作ってクレームさえ出なければ経理上は極めてノーマルな商売として成り立つようなビジネスモデルを作っているのではないか。
広告宣伝費と流通費の分が「紹介者」にマージンとして入るのだが、これは「紹介者」が広告と営業、そして小売りも半ば兼ねていると考えれば極めて筋が通る。
問題は、なぜノーマルな販売経路に乗せないか、である。「ユダヤ的資本主義」に搾取されぬため?
おそらく浄水器の説明会に行っても出所の確認出来る調査データや会社の作った製品仕様書などはないのだろう。


説明会は2時間。恐いもの見たさはあったしいろいろと疑問は湧くが、「水には興味が無いし、やりたいことはある」と断った。