「バカヤローッ!」by アントニオ猪木

いつのプライドの大会だったか数年前のこと。
真ん中に入る休憩時間の後、当時プライドでは恒例だったセレモニーでテーマ曲と共に入場しリングに上がった猪木は、マイクを渡されるといつものパターンで「元気ですかーッ!」と呼びかけ、それに会場が歓声で応えると、突然「バカヤローッ!」と叫んだのだった。驚きのあまり、軽く笑いの起る場内。猪木はニコニコしながら「皆さん、世の中にもっと怒りましょうよ」などと道徳的な話を繋げる。
僕はその瞬間の素っ頓狂さに笑っただけで、すぐにこの出来事自体を忘れそうになった。
しかし、数日後に買った格闘技雑誌の特集号で記者(ターザン山本だったか?)が指摘するところによると、前半しょっぱくて中身のない試合が続いたことへの猪木による会場の声の代弁であり、緩んだ会場の空気への、そしてファイターを含めた主催者達への喝だという。
実のところ、真意ははっきりしていない。
しかし、事実として、猪木のバカヤロー発言後のこの日後半の試合は好勝負の連続となり、結果として満足度の高いであろう良い大会になったのだった。


いつか真似して、叫んでみたい。(笑)