「世間をお騒がせして申し訳ありませんでした」

今日のとある事件の当事者の弁。芸能人の不祥事やら政治家の微罪やらで口にされる言葉。
日本的あいまい表現を全否定する気はないが、しかし、奇妙だ。
「騒がせた」ことは悪いのか?「騒ぐ」はどちらかといえば負の騒動をイメージさせる言葉だが、たとえば「キムタクを見てキャーキャー騒いでいる」の「騒ぐ」は悪くはない。有名人のマイナス面が露見したことを話題にして「騒ぐ」大衆は大勢いて僕もしばしばその一人になるのだが、愚かさをあげつらってむしろ楽しんでいるわけだから、謝られることでは全くない。
謝罪の理由が「騒がせた」ことだと表現されるとき、問題のすり替えが起っている。ただ「騒ぐ」という現象を生じさせた事を謝るだけで、騒ぎの原因が実際に存在したのか、あるいはそれが咎められるべきことかどうかをあいまいにやり過ごすことになる。脱税したとか子供が麻薬を使ったとか、明らかな犯罪行為へ加担しているならはっきりと「世間にご迷惑をかける犯罪行為(or違法行為)を行ない申し訳ありませんでした」というべきだろう。それが意図的なものでなかったならば、「無知で(orミスでor不注意で…etc.)引き起こしてしまい」などと付け加えればよい。


この文句は嫌疑がかかっているだけで結論の出ていない犯罪の被疑者や離婚する芸能人までが使うのでことはややこしくもなるのだが、そもそも彼らは謝罪する必要はない。基本的には欧米人がやっているような、事態を明確にする合理的なコメントの方が言葉の用法としては望ましいと思う。もっとも、「騒がせた」ことをとりあえず謝っておくことは日本人の慣習であり礼儀といえば礼儀なので、許容はする。