赤ん坊の笑顔は天使、下<しも>は垂流し。

成田三樹夫って茶目っ気のある中堅の悪役として子供の頃から好きだった。本人が若い頃の作品を見ても彫りの深い容貌といい演技といい抜群。ネットで検索したら東大中退と書いてあるサイトがあったけれど本当なんだろうか?天本英世(東大法学部中退)と彫りの深い顔つながりで混同してない?
作品総体は、細々とした道具立ては面白いのに今いち。市が逆恨みで追われるだけの立場、妙にヒューマンな展開(本来関わりのない仇討ちに味方して、親しくなっていた侍・成田三樹夫を斬ってやる)、主人公の欲望や動機がない。

『白い馬』の無垢で純心、純心であるがゆえに正義となる美貌の少年と野生の白馬、その白馬をとらえようとする阿漕な大人達 ー こちらは不細工な悪役顔 ー という安直な(「反近代的」な)対立図式に白けた。『赤い風船』に出てくる子供は赤くて丸くてふらふらしている風船の存在感と動きにただ魅かれ、後半出てくる敵役も何となく風船にひかれたガキどもである。後者がリアルでありかつ正しい。3年のインターバルを置いて作家の世界観が進歩している。
子供は本来、無知で率直なだけである。本質は悪ではないにしろ善でもない。大部分の子供を主人公にした文学や映画は、そのリアルを無視して既成の(本体のない)イメージを延々と繰り返している。
自分が子供の頃はとくに、ありえない子供を描いた作品とそれを作る大人というものが気持ち悪かった。