溝口の中では一番好きな作品。主な理由は二つ。
一つは二人の愛情の交歓が(溝口には珍しく)ストレートに肯定的に描かれていること。
もう一つはその愛が、共同体の威力に対抗し、最後まで凛として貫かれること。これまた悲劇に打ちひしがれて終わる溝口作品の主役の中で珍しい。共同体から押し潰される人間より、やはりこういう個人が描かれている方が好き。