◯「日本人と「日本病」について」岸田秀×山本七平
古本。岸田秀を読むのは久しぶり。
前書きに「消去抵抗」の話。
T字路を準備して、右に曲がれば必ず餌があり左側に曲がれば必ず電気ショックがあると規則性をもって条件づけたネズミは、餌と電気ショックの抵抗の左右の配置を入れ替えてもすぐに新しいルールに順応する。
しかし、最初の条件付けの時に、餌と電気ショックをアトランダムに入れ変えながら過ごさせたネズミは、そのうち迷うのを止めて左なら左と固定的(神経症的)反応をし始める。面白いのはここからで、ネズミが方向性を固定した後にアトランダムを止めて餌を逆の右側に固定しても、ネズミはずっと電気ショックのある左に曲がり続けるという。本格的な神経症である。岸田秀曰く、第二次大戦中の日本軍の行動パターンはこれと同じであり、それ故に学習能力が正常に働かず負け続けた、と。
しかし個人レベルでも同じ失敗をし続ける人はいる。その人々は、アトランダムな餌と電気ショックのような、快不快をもたらす周囲からの刺激の偶発性(あるいは、事実がどうあれ偶発的としか認識出来ないこと。)に苦しんだということになるのだろう。